我が国の今後の大学教育を取り巻く環境は大きく変化しており、特に18歳人口の減少は大学教育の根幹を揺るがすものとなっています。このような状況下、今年に入り、高等教育、大学教育の将来について重要な答申や提言が相次いで出されています。今回は本年2月21日に出された中央教育審議会の「我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~」と3月31日に出された国立大学協会の「わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像」を取り上げ、その概要をお伝えしたいと思います。
中央教育審議会の答申はそのタイトルにもあるように知の総和の向上が大きなテーマとなっています。知の総和は数×能力で表され、人口減少社会においては能力の向上が重要となります。そのため、学生一人一人の能力を高める「質」の向上が企図されています。次に「規模」の適正化が謳われています。こちらは量的な課題となります。そして、「アクセス」の確保の観点から地理的、社会的な教育機会の均等化について言及されています。
一方、国立大学協会が公表した国立大学の将来像では中央教育審議会の答申と同様に人口減少を見越し、2040年を目標年とする将来像を描いています。知の総和の増大という観点から地方や女子の進学率の向上、全学生の3割まで留学生の受け入れを拡大することや、博士号取得者を3倍に増加されること、地方大学の維持などが明記されています。また、全国に85ある国立大学がそれぞれの特色を活かしつつ全体として「国立大学システム」を構築し、社会変化を促進する機能を最大化することが強調されています。